カールツァイス

 Zeissといえばドイツの光学機メーカーで、私たちの業界では顕微鏡の最高級品として評価の高い会社だ。私が日本で研究を始めたころ頂いた研究費の大半をつぎ込んでZeiss のAxiophotoを購入し、毎日標本を眺め続けたものだ。ときには分解し、パーツを交換して光学機器の扱いと構造を勉強させてもらった。もちろんレンズは素晴らしく特に透過光や微分干渉像はいくら見ても見飽きない美しさだ。
ISBN:4105314017

 この本はレンズメーカーとして始まったZeissの歴史、特に東西ドイツ分断による分裂を経て再統合を果たし世界的な総合光学機メーカーとしての地位を確立させるまでの話が述べられている。


 最近のZeissには不満がある。ユーザーの要望やクレームにたいしての対応が悪い。これはドイツの本社が全ての機器情報を押さえていて営業の末端からの意見が通りにくいからなのだと思われる。国際的企業としての成功の見返りに大企業病に蝕まれつつあるように思われる。「最高のものをつくってやったから文句を言わずに黙って使え」といわんばかりなのである。これではえらそうな寿司屋のオヤジとかわりがない。店が傾くのも時間の問題かもしれない。技術屋とビジネスがうまくマッチしてこその今の成功だ。ユーザーあっての光学機器。ここで今一度初心に帰って、Zeissには最高の光学機器を生み出す、しかしユーザーにはフレンドリーな機械メーカーを目指してほしい。

追記

シマノに続いてこの話を持ち出したのはシマノがユーザー(市場)との対話を生かして発展してきた事がわかりやすいのに対してツァイスの場合には営業・販売の人たちがせっかく吸い上げた要望が上まで上がって行かないように感じるのだ。本社に対して末端が自由にものを言えない雰囲気は危ない前兆だ。