田園の原子炉

 Cesky Budejovitcheに向かう途中で立ち寄った原子力発電所。海に面した港を持たずエネルギー生産は石炭のみのチェコ原子力をエネルギーの選択肢として選んだ。田園地帯に突如として現れる4基の原子炉は別世界のような異様な光景だ。発電所のすぐ近くを車は通過し、そびえ立つ原子炉を見上げるが警備がほとんど見えない。ガードの手薄さに拍子抜けだ。友人の話によるとチェコ人の多数は原発をエネルギーとして受け入れており環境汚染の点から言うと石炭炉の発電の方がよっぽど悪いと思っているようだ。確かに共産主義時代の環境汚染はひどかっただろうから水蒸気を巻き上げるだけの原子炉ならそう思うだろう。チェコには反原発運動は存在しないらしく、従って原発の周囲の自治体が妙に裕福になるということもない。この原発建設は原発建設を禁じる国策をとった隣国のドイツをたいそう怒らせたらしいがグリーンピースもここまでは進出していないようだ。(ブルタヴァ河はエルベ川となってドイツに流れ込む)。原発建設はチェコが経済的に独立を続けるためのリスクを伴う選択だったのだろう。隣国に蹂躙され続けた歴史を持つ国が独立国家として生き続ける事は重い。

 原子炉を持つことイコール核兵器獲得への可能性が一歩進んだことになる。チェコが原子炉を持つことを隣国が渋々ながらも容認したのはチェコ核兵器生産への道を歩まないという信頼があることの裏付けだ。翻って朝鮮半島の我が隣国にはその信頼がなく、米国が強引にでも北朝鮮の原子炉開発を阻止しなくてはどうしようもない。