二人だけのお墓

 新年早々には少々似合わない行動なのだが、年末年始はカメラを持って近所の墓地を徘徊した。古い墓石も新しい墓石もその多くは震災の衝撃を耐えて残ったものだ。きれいに磨かれて、掃除も行き届いた墓石を見ると気持ちが良い。そして石に刻まれたメッセージに様々な物語を見ることができる。


 このメッセージの下にご夫婦のお名前が刻まれており、奥様が41才で亡くなられ、その三年後ご主人が53才で亡くなられたことがわかる。どういう事情だったのだろうか?ただわかることは二人が入るための、このメッセージ*1を刻んだ墓所を用意していたということだけだ。



 墓碑銘はこう刻まれている(一部不明な所あり)。

楽を同じうし偕に老いつつ
毎日元気に二人差し向かいの膳につき
子や孫の話をしながら親しんで味に
圣了二斗月の睦みを味わう幸せ。
舎利弗とその妻伊勢

偕に:共に
圣了二斗月:読みとりにくく意味不明
舎利弗:「とねとる」とよむ。舎利=遺骨


 赤い大理石に美しい薔薇を彫り込んであり、その脇にはピンクの本物の薔薇が飾ってあった。それ以外には本名も、没年も、家族の名も一切記されてはいない。刻まれた文章から判断するとお子さんも独立して孫の顔を見てから亡くなられたのだろう。そして没後も墓を訪れて薔薇の花を欠かさず飾ってくれる遺族を残したということだ。見る人に暖かいメッセージを発するお墓だ。

*1:聖書の一節?