Hell on Wheels

マイヨ・ジョーヌへの挑戦-ツール・ド・フランス100周年記念大会」
 見てきました。2003年のツールドフランスは私がちょうど自転車ロードレースに興味を持ちだしてフォローしだした初めての大会だ。それ以来毎年見ているがランス・アームストロングが5連覇を飾ったこの大会が断トツに面白かった。この映画はドイツテレコムチームに密着して過酷なレースの内幕をたっぷりと見せてくれる。よく覚えているステージの映像が次々と流れて当時の記憶を引っ張り出しながら見ることが出来た。レースの合間のホテルでのマッサージの間のインタビューがたっぷりと流される。選手の肉体は想像していた筋肉質なものよりもずっと柔らかくしなやかに見える。選手、特にEric Zabelの語りがたっぷりと出てくるのがうれしい。Zabelといえば当時すでにベテランスプリンターで野球で言うと阪神の金本クラスの大選手だ。しかしこの年のツールではいくらスプリントに食い込んでも昇り調子のアレッサンドロ・ペタッキなどに打ち負かされて自信をだんだん失っていく。しかしそれでももくもくと山岳ステージに耐えてパリを目指す姿が良い。Zabelのコメントでアームストロングやヤン・ウルリッヒは彼にとっても手の届かない別世界の存在だと言うくだりが印象的。トップ選手にも届かない極みにいるものだけがツールに勝てるということだ。

 この年のテレコムはカザフスタンのアレクサンドロフ・ヴィノクロフが活躍して3位に入る。彼の敢闘精神あふれる走りは見ていて気持ちいい。また鎖骨骨折を押して完走し、4位に入ったタイラー・ハミルトン、そして何よりも目の前で転倒したベロキを抜群の反射神経と判断力でよけてクラッシュを回避したり、Luz-Ardidenでの転倒を乗り越えてライバルをぶっちぎったアームストロングの激走がすごい。

 全体として昔の映像でツールの歴史を紹介したり、TV中継の映像をまじえ、時系列に従って紹介してゆくオーソドックスなまとめ方だった。最後のシーン、ステージ優勝者を記者が取り囲む脇で最終ステージのスプリントを取り損なったZabelがひとりたたずんで長いツールの余韻を味わうシーンがよかった。