Just say No

どう考えて良いのかまだ考えがまとまらないのだがメモ代わりに書き付けておく。

 大阪大学の教授によるデータ捏造事件については大学の調査委員会が記者会見をして捏造行為の一端について説明があった。この件ではと告発した助手が研究室で毒をあおって自殺しているのだがその経緯についての詳細はあきらかにされていない。とうとうNatureまでがこの事件を取り上げた記事を掲載した。

Mystery surrounds lab death
Japanese biologist found poisoned at his bench.
Ichiko Fuyuno and David Cyranoski

 すでに報道されているものを超える内容ではないが助手の自殺の経緯には不明な点が多いことを指摘している。なぜ告発した川崎泰夫さんが死ななくてはならなかったのか、彼を知る人たちには不可解極まりない。

 柳田さんがブログ英語版で告発者の保護の必要性について訴えている。当事者同士が接触しないように隔離すべきだという主張だ。

Their primary concern must therefore be the protection of reporter(s) from further harassment by the boss.

 これは先日私が紹介したウィスコンシン大学のケースとも重なる。こちらの場合は告発後も隔離までの処置はなかった様だ。関連する研究者とラボスペースを共有していたという事情もあり訴えられた教授からあからさまな圧力をかける事の予防線は張ってあったのだろう。

 どの時点で関係者を隔離し、徹底した調査を行うのかの決断は難しく後手に回りがちだ。また学内の誰がどのような権限で研究上の秘密も含まれる研究室の実験データを調査をするための決定を下すのかは難しい判断を求められる。しかし研究者の自浄能力は組織の長による果断な判断にゆだねられている。

 もう一点、もっと大事なことは問題が深刻化する前に問題の芽を摘むことだ。ボスや一部のメンバーが独走しデータを独占して論文執筆する様な場合に問題は生じやすい。普段からデータを共有してフランクで厳しいディスカッションを積むラボならその様な問題は起きないはずだ。ラボの責任者がこのような科学者として当たり前の態度を保つことだけで問題の芽は摘まれる。

 納得いかないこと、事実を曲げる行為に対してノーとはっきり言う事。駆け出しの大学院生の間に身につけておかなくてはいけないことだ。