旅先にて


 朝起きて散歩に出かけようとしたが外は傘が役に立たないほどの激しい雨。あきらめて午前中は部屋にこもっていた。昼から本日の訪問先TLLへ。広いキャンパスの中にある研究棟はゆったりして余裕たっぷり。欧米人、日本人のPIも多く国際色豊かだ。午後からセミナーと研究室訪問をすませて夕食を頂く。

 シンガポールはアジアの中にあってアジアという枠ではくくれない。欧米人は数ではわずかなのだが文化的には大きな影響を持っている。何が彼らを引きつけるのか?清潔な町並みとモダンな生活環境。建物に入れば冷房が効いた部屋で熱帯の島だとはにわかに信じられないくらいで、多国籍の学生たちは教養も高く勤勉だ。しかしこれだけでトップ研究者が次々に引き寄せられるものなのだろうか?謎はますます深まるばかりである。一つだけ確かなことはこの地が科学の面ではまだ発展途上だが、人材と財政の両面で十分なインフラがある。これから何かを始めようと言う科学者にとっては文化と伝統が幅をきかせて窮屈な欧米や日本よりも入り込んで手腕を発揮しやすいのかもしれない。ただしシンガポールが斬新な科学創世の基地となるのか、それともここでの成果があくまで欧米経由で発信され、欧米科学者の植民地の位置にとどまるのかはこれから見守って行かなくてはならない。