シンガポール2

前日に引き続きA*STAR (Agency for Science, Technology and Research)に行ってきた。ここはシンガポール政府(Ministry of Education?) が管轄するBiopolisと呼ばれる地域に設立された研究機関でその中に様々な研究所が含まれる。シンガポール経済のインフラを生命科学に求めることを戦略目標に定めて大きく投資を行っている。極めてモダンなデザインの建物が林立し、周辺にはおしゃれなレストランが集まる。これらは全て政府の出資。工業団地に民間施設を誘致し、民間活力を利用するという日本の方式とは正反対。この国は住宅も8割は国営の施設だ。豊かな資金を持つ政府が経済をリードしようとしている。

 このようにトップダウンの号令であっという間に立派な施設を作り、外国から多数の研究者を好条件で引っ張ってきて研究を行わせる。メリハリがきいているが性急で強引さを感じさせるところに多少の不安を感じる。国内でも批判はあるらしいが今はイケイケで突っ走っている。目に見える成果がでるまで政府がじっくり待つことができるか、その時間的猶予を与えるだけの政治的な安定性を維持できるかが鍵のようだ。

 外国から優れた指導者を招いて科学の基盤を築く。これは明治時代に日本が歩んできた道と重なる。日本に招かれた多くの雇われ外国人たちは教育、技術の面で多くの功績を残した。シンガポールの外国人たちがこの国の100年後に果実をもたらすとしたら彼らに単なる知的労働者としての成果を求めるだけではなくこの国自身の人材と文化を育てる助けを求められるかにかかっているだろう。

 Biopolisの建物の立派さでびっくり。圧倒的です。シンガポール大学のキャンパスにあってアカデミックな雰囲気があふれるTLLとは対照的。移民の島であるこの国がバイオサイエンスの国際的なハブとして発展するには大胆な投資で研究を活性以下する一方でアカデミズムを重視してこの国で得られた成果と人材が熟成し定着することが必要だろう。私には国民的ルーツが希薄(強いて言えば中国か)に見えるこの国にどのような形で科学のルーツが根付くのかを注視すべきだろう。