白川義員の世界

 山岳写真家といえば山好き風景好きが高じて写真家になるケースが多いように思うのだが白川義員氏はそうではないとどこかで聞いたことがある。写真の対象として山を選び、必要に迫られて山に登り、危険きわまりない高所の撮影飛行をこの年齢までやってきた写真家だ。硬質で色合いを極端に強調した写真は山好きのコレクションとは異なり、山岳を芸術作品の対象として見ていることを示している。

 そんな白川氏の新作展が催されているのを今朝の新聞で知り用事のついでに出かけてきた。世界の滝を選んで撮影したシリーズ。巨大な滝の全貌をこれまでにないアングルで納めることを目的として様々な方向からとらえた巨大なプリントが会場を埋め尽くしている。大きな滝ばかりだから全貌をとらえるには空撮しかない。世界各地の180の滝のかなりはヘリを飛ばしての空撮だ。凄い手間と時間、そしてお金がかかっている。70歳を超える白川氏のエネルギーは凄まじいものだ。

 会場は百貨店の展示にしては余裕がありゆったりと見ることができた。願わくばBGMとして滝壺の轟音を流してくれれば観客はいっそう百名瀑の世界に浸ることができただろう。展示会は静かなだけが良いわけではない。このような単一テーマの展示会の場合、作品に合わせた音響の効果でいっそう臨場感が増すというものだ。

 帰りがけに「仏教伝来」を購入。硬質な自然ではなく人間の営みを白川氏がどのようにとらえているのか、楽しみだ。サイン会のチケットをもらったのだがちょっと時間がなくサインをもらい損ねたのが残念。
仏教伝来―白川義員作品集 (1)