アメリカン・ギャングスター

 朝に原稿書きと論文のレビューをやってから出かける*1

よかったところ

  • 前評判通りの緊張感溢れるストーリー展開で最後まで引き込まれた。
  • ディンゼル・ワシントンの成り上がった麻薬王ぶりに冷酷さと保守的な家族観が矛盾しながら共存するところがよい。しかしこれはまさにイタリアンマフィアと同じだ。
  • ラッセル・クロウの職務に誠実すぎるあまり家庭を崩壊させる警官ぶりがよい。
  • 映画としての構成の良さ。
  • アメリカの恥部を遠慮なく描くところ。

いやだったところ

  • 1970年ベトナム戦争当時のアメリカの病理を描いている。ベトナム戦争での敗退というアメリカ人としては忘れたいが否定できない醜い事実を背景に物語は描かれる。当時の映像が断片的に記憶に残ってフラッシュバックする。
  • ベトナム戦争の戦死者の棺に仕込んでヘロインを密輸するなど戦死者を二重に痛めつける非道い話だ。
  • 麻薬の汚染と警官の汚職というアメリカの恥部。警官の半分が汚職で逮捕されるなど、いくら何でも日本ではあり得ないくらいのひどさ。しかし現代日本の非戦の国是と安定した治安の*2一部はそんなアメリカにもたらされたものだとはなんたる皮肉。
  • 暴力シーン、冒頭から全開。こんな非道いシーンを二時間あまりも見続けることができたのはアメリカ人の殺し合いだからだろう。同胞(=日本人、東洋人)が痛めつけられ血を流すシーンは痛ましくとても不快で見ておれない(参照)。以前のこの映画を見た時もそう感じたのだが暴力的な洋画に対して耐性があるのは他人(異人種)の殺し合いなら平然と傍観する感覚が多少ともあるからかもしれない。これは異国に侵略する兵士の感覚に通ずるかもしれないと思うと慄然とする。

ともあれ感想が多いのは印象多い作品である証拠だ。

☆☆

*1:言い訳!

*2:少なくとも