ひとつぶで二回おいしい行政刷新

行政刷新会議では当初指名されていた多数の議員が外された.小沢幹事長の意向だと言うが政治主導を掲げる民主党としてはおかしな決定だ.
 代わりに選任された民間からの仕分け人が議員の指揮のもと(そして財務省の筋書きで)ばっさばっさと豪快にきりまくる.多くの場合国民の喝采を浴びたが科学研究費の段になって大きな国家プロジェクトのスパコンJSTの科学未来館が厳しい査定を受けてから風向きが変わる.産業界の大反発や毛利館長の奮戦もあって世論の注目を浴びる.それに加えて若手研究者の生命線とも言える学術振興会の予算の削減を容赦なく決めてしまったのが引き金となって、文科省へのコメント投稿や学会、大学からの声明が相次いだ*1

 経済学者の大竹文雄先生がこんな事をおっしゃっている.
事業仕分けの行動経済学: 大竹文雄のブログ

 例えば、次の手法だ。最初に、「財政上の理由で、すべてのプロジェクトの予算を一律に2割カットする」と宣言する。この時、人々は当然反対するだろうが、全員一律で、そこには評価が入っていないことから、「仕方がない」とあきらめる人も多いだろう。そうすると、人々の「現状」は、最初のところから2割カットというところまで、下がることになる。この下がった「現状」をベースとして事業仕分けで評価をつけるのだ。無駄が多いと判断されればより大きなカットに、無駄かどうかは簡単には判断できないものは2割カットという「現状維持」に、明確に評価が高いか政治的に重要だと判断されたものは「1割カット」や「カットなし」という「現状」からのアップという判断を出せばいい。

 このブログ記事は公衆の面前で担当者をさらし者にして個別に決定して行く手法に危うさを感じたという趣旨だ.

 しかしよく考えたら程度の差こそあれあの会議に出た時点でどの事業もほとんどカット、最悪廃止の憂き目にあっており一律カットとの違いは大きくない.民主党は仕事をしていますという大いなるアピールになった.

 週末になると政治家の間から様々なコメントが漏れてくる.日曜日には珍しくテレビ討論を三本はしごで見た.最初二本は自民党の石破政調会長が明快に論破して民主党はたじたじ.三本目は田原総一郎が枝野議員と蓮舫議員に迫るというもの.二人とも行政刷新会議の結果は最終決定ではないという事と、会議の際に見せた攻撃的な姿はあまり感じず.二キロやせたという蓮舫議員のやつれた姿が少し痛々しかった.で、今週である.学術関係者の猛反発で世論の潮目が変わったと見たか与党関係者の口ぶりは変わり、地元の新聞には「スパコン復活」の見出しが躍る.

 そこで政治主導の出番だ.決定に責任を負わない民間委員にばっさり切らせた事業の中からいくつかを、世論の動向や政治的な価値から判断して政治家が復活させる.

 ばっさり切って大いにアピール、復活させてお手柄.一粒で二回美味しい行政改革会議.これがシナリオと見た.なんのことはない大竹流(?)コストカットの手法を二段階に分けたという訳だ.

 だからといって黙っていてはなにも変わらない.与党は切られようとしている側に理があるのかを世論の潮目で判断するはずだ.世論の支持あってこそ復活.だからいまこそ言葉を尽くして語り続けなくてはいけない.

*1:未だに思考停止の学会も多いのだが・・・