国宝 吉田修一

書評で評判が高く読んでみた。ストーリーが蕩々と流れる大河小説のような趣で、つまづかず読み進めて読了。歌舞伎に縁のない私なので舞台の描写の巧拙は判断できないが美しい物語という感じである。読みやすさの理由は人物描写が単純で謎を仕込んで、後ほど回収するような場面が一切ないからである。なので人物描写は浅く、プロットは単純で小説としての深みには欠ける。新聞の連載として断片的読むにはこれくらいの容易さで良いだろうがまとめて読むには小説としての巧みさ重厚さにかける。また章ごとに話が独立していて、時系列にしたがって進む。あたかもテレビの連続ドラマを意識したような物語構成に著者の目論見が透けて見えて良い感じはしなかった。

 

 

publications.asahi.com