A Promised Land

オバマ元大統領による回顧録。自身の著書を本人が朗読する。発声は明晰で力強い。彼の若い頃の回顧から、上院議員になり、一期で大統領選に出馬し、そのまま当選しホワイトハウス入り。その彼の大統領第一期目の記録。大統領当選直後のリーマンショックオバマケアなどの裏話を大統領本人の言葉で聞けるのはとてもよい。しかし当然のことながらあらゆることはオバマの一人称で語られており、様々な政策決定においてどのような選択肢があり、政策スタッフや多くのアドバイザーの意見の対立し体験がどのように検討されて決定に至ったのかは充分には説明されていない。もっと政権の中での議論の仕方を書いてほしかった。この点はトランプ政権の補佐官だったJohn Boltonが政権スタッフへの皮肉も交えて書いたThe Room Where It Happenedに軍配が上がる。海外首脳へのメンションでは英国のカメロン首相、ドイツのメルケルなどが頻繁にメンションされる。残念ながら日本の首相は「日本の首相は短期で交代を繰り返す。今の首相はちょっとおかしな人物だ」と言った短文で済まされている(「トラスト・ミー」の鳩山首相の事である)。むしろ平成天皇に会ったときの印象の方に天皇個人と彼が背負う歴史の重みへの敬意が表れていた。本書のハイライトは2011年のビンラディン暗殺だ。オバマにとっても困難だった第一期での顕著な成果と自負しているのだろう。従軍の経験なしに、米軍の最高指揮官を務める批判へ答えたいとの意味もあるだろう。再選を目指す動きの中にトランプが登場して次作へのプロローグとしている。

★★★☆☆

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