愛の流刑地

 ☆ 見たのは大分前のこと。原作とは構成を変えて殺人シーンから始めてその行為の罪と罰を問う法廷ものに仕立てた構のは良かった。原作を新聞でちらりと見ていた時には中盤までの流れはひたすらあのシーンばかりでうんざりだった。

 主演の二人の演技はまあ良かったのだが、豊川悦司はもっとくたびれて、情けない男になっても良かったかも。検事役の長谷川京子はきれいすぎで浮いていた。感情が不安定すぎてダメ。法廷にミニスカートで出てきたり、取り調べで肩出しますか??? 長谷川京子さん、ビールのCMや「華麗なる一族」での良妻役はうまくはまって良かったのだが、今回は残念ながらはずれでした。期せずして「それでもボクはやってない」と法廷ものが続き、女性検事(長谷川京子)と女性弁護士(瀬戸朝香)の女優対決の趣もあったのだが今回は瀬戸朝香の完全勝利に終わった。その後のテレビ版ではなんと瀬戸朝香が検事役らしい(見てません)。瀬戸朝香さん、そこまでやらなくてもあなたの勝ちですよ!

 もう一つ驚いたのは冷静な裁判長役で法廷シーンを引き締めていた本田博太郎。この人「それでも僕はやってない」にも出演していてその役がなんと留置場の主でお節介なオカマの男だった。裁く側と裁かれる側、どちらも器用ににこなしてしまう、恐るべき役者魂。

 菊治の娘は理解ありすぎでおかしい。豪華スターを共演させるために無理して入れた役作りが多かったのは興ざめ。監督としては営業面での要請も入れなくてはいけなかったのだろうな。劇場には高校生くらいの女の子のグループが居たが大人の女性には受けない(理解されない)映画だと思った。

 そう考えると「あるいは裏切りの犬」の精緻な構成は改めて見事だったと感じる。全てのせりふに意味があり、無駄なカットがひとつもなく二時間の作品に凝縮させてあるのだ。