Perfect Days


ヴィム・ヴェンダースが東京を撮った映画ということで話題の作品を観にシネリーブル神戸へ。1日一回上映ということでほぼ満員。役所広司演じる初老男性。早朝に目覚め、盆栽の世話。缶コーヒーを飲んで東京都のトイレ掃除の仕事に出かける。仕事ぶりは極めて丁寧。仕事が終わると銭湯に入り、駅そばの居酒屋で晩酌。寝床で本を読み就寝。休日はコインランドリーで洗濯をして夜は行きつけの小料理屋で晩酌。趣味はカセットテープで聞く80年代ロックと古本屋で買う百円均一の文庫本。それからフィルムカメラで撮影する木漏れ日の映像。規則正しくテンポを刻む日常だが時折起こるエピソードによる変調に彼は心揺すぶられる。しかし感情に支配されて負けることなく、あくまで冷静に寡黙な自分に戻る。この気分はとても共感できるが、彼のような質素な暮らしを続けられるかどうかは自信がない。

 

ヴィム・ヴェンダースといえばアメリカ大陸の旅を主題にしたパリ・テキサス1984)。訳ありの男性が放浪するロードムービーで、自分にとっても印象深い作品だったが、主人公の抱える心の傷が大きすぎて気楽に見れる映画ではなかった。40年後に撮影した本作もやはり訳ありの孤独な一人暮らし男性が主人公。しかし79才になった監督の人物描写には人間への共感が溢れていて安心してみていられる。東京中のトイレを自家用バンでカセットの音楽を鳴らしながら巡る。外国人にとってはウォッシュレットまでついて、デザインも奇抜な東京の公衆トイレ巡りは遊園地の感覚で、首都高速の風景はロードムービーそのものなのだろう。石川さゆりや田中民が出演するなど日本人にとっても見どころあり。東京スカイツリーが見える下町の映像に郷愁を感じる人も多いだろう。