Inconvenient truth

論文を二本読んでから映画を見ることにした。一本目が"Inconvenient truth"。これはクリントン政権の副大統領だったAl Goreが張っている地球温暖化に対する注意喚起キャンペーンのドキュメンタリーだ。彼の活動は前から耳にしていたがどうやら彼の大学の恩師が大気中のCO2量の増大を感知し、警鐘を鳴らす先駆けだった方らしい。Gore氏の論点は以下の通り。

  1. 20世紀後半になってからの大気中のCO2は氷河期以降で最高値を更新し続けている。それに歩調を合わせて気温の上昇、山岳の氷河、極地の大陸氷、海氷の誘拐が続いている。そしてCO2の上昇と温暖化には因果関係があるとする議論は多くの科学的なサポートがある。しかし事の性質上絶対的な証明があるわけではない、また証明したいと誰も思わないだろう。
  2. アメリカは世界最大のCO2放出国であり、エネルギー効率が極めて悪い国でもある。しかし共和党政権はこの事実から国民の眼をそらせようとしている。京都会議の議定書も批准していない。*1
  3. 強力な温暖化対策をとらなくてはならない。そのためにはアメリカ国民の意識を喚起することが大事。*2

 映画で紹介されるゴア氏の講演ぶりは見事だ。スライドのデータを用意したり演出したりするクルーもいるだろうが、本人も知性の高そうな人でほとんど言葉に詰まることなくスムースにかつ硬軟織り交ぜた弁舌は聴衆を虜にする。さすがだ。学者にあの真似をしろというわけにはいかないだろうが、優れたプレゼンテーションのお手本となる映画だ。

 ゴア氏は現在のブッシュ大統領と争った。あの怪しげな結末の大統領選で僅差で破れはした彼が今アメリカを仕切っていてもおかしくはないのだ。そうだったとしたら今のアメリカがどうなっていたのか?余りにもブッシュ政権とは異なるタイプの政治家なので仮定の話とはいえ今とはまったく違う世界になっていた可能性もある。

 国際線の映画としては異色だが、各国語で何本も用意されていた。おそらくこれもゴア氏のキャンペーンの一環なのだろう。いいものを見せてもらった。

*1:石油産業に支えられた現政権は消極的になっており、中東の石油の利権も絡むイラン、イラク問題には熱心だ

*2:民主党支持層であるインテリ層を除けばアメリカ国民の国際感覚は高いとは言えない。自分たちが使っている燃費の悪い車のせいで南の島が沈むなんて事に想像力が働く事は悲しいことにあまり期待できない