ロダン−創造の秘密

 筋骨隆々のブロンズ像が定番のロダンだが「白と黒の新しい世界」に題されるように今回は彼の石膏や大理石の作品が多めに集められていた。ロダンの大理石像は先日フィラデルフィア美術館(PMA)で見たのだが、真っ白い巨大な大理石から人物像が浮かび上がる様子が印象的でブロンズよりも気に入った。ロダンは元の石膏型からブロンズや大理石などの彫像を様々な形で作成したらしい。私としては荒さが残る石膏像は未完成品という感じがして、丸みをおびて、重量感あふれる大理石像が好みだ。

 ここで展示されていたラ・パンセは石膏。写真はPMAで撮影した大理石バージョン。
 

 大作「地獄の門」を部分毎に解説したコーナーは興味深かった。「地獄の門」自体は静岡県立美術館や、PMAでも見たのだがこの作品を構成するそれぞれの像の意味合いがわからず今回の解説でわずかながらも理解ができた。しかし残念だったのは本体全体の構成が実物がないためによくわからなかったこと。

 これもPMAにて。「ウゴリーノ」の下の苦しそうな像(名称不明)がこちらを向いている。

 外国の美術館はさほど込んでいないこともあってか写真撮影がokなところが多い。今回の展示も念のため尋ねてみたがやはり駄目だった。空いている時には三脚なしフラッシュなしの条件で撮影をokにしてくれても良いと思うのだが。平日の午前中あたりを撮影日に指定すれば写真マニアを呼び込んで入場者増につなげる事もできるだろう。

 ロダンの作品は圧倒的に男性像が多いようだ。それもほとんどは過剰に筋肉を緊張させたヘラクレスのような身体。ロダンお気に入りのポーズは今回の展示会のポスター(「私は美しい」)にあるように男性が胸で重量を支え背中を反らせて体幹を緊張させているところだ(イナバウアーみたい)。たくましい背筋と臀部が彼(と彼のファン)の好みなのだろう。女性像すらそうなのだ。わずかに展示されていた華奢な若い男性像が「青銅時代」。この程度の方があっさりしていて良かった。

 会場入り口の光景。この美術館の照明はとても見やすい。天井を高くした贅沢な作りのおかげで遠くから落とされたライトが柔らかく作品を包むからだ。小さな会場では反射した強いライトが眼にあたり作品を台無しにしてしまうことがある(たとえば神戸市博物館や、大阪市美術館)。このような大型の美術館をもっと活用すべきだ。

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