「やさしいモノクローム」トークセッション

 8/30 4名の写真家のお話が聞けるというので参加.いずれもモノクロ銀塩写真を手がける作家でそれぞれ興味深いお話を聞く事ができた.

 キャリア二年あまりの角田佳子さんはある日人から譲り受けたオールドカメラに入れ込んで写真を学んだそうだ.旅先のスナップをセンス良く切り取る作品.

 福山えみさんはちょっと変わった被写体を選ぶ作家.街を歩いていて思うままに撮るとおっしゃっていたがランダムに撮るだけでは作家としての個性は出ないはず.なにか特別な瞬間にシャッターを押してはずだと思い、作品を前に撮りかたを伺う.福山さんの作品には何の変哲もないような光景に何らかのパターンが存在する.ある写真でその点を指摘してみたが福山さんご自身は特に意識しておられなかったようだ.カメラがレンジファインダーなのでファインダーの像が正確に移される訳ではなく、眼に映る光景とフィルムに映る映像のずれの偶然に面白さを探すのだそうだ.また写真を撮るときには風景の色は意識に入らずモノクロの光景を見ているのだそうだ.色に惑わされて見失わないように視覚を調整しているのだろうか.

 山脇慎也さんはこれまでも作品を拝見しておなじみの作家だ.淡路島の美術館をテーマに作品を撮りためているそうだ.素直な人柄そのものに被写体(展示されるオブジェ)の主張を汲み上げて撮っておられる.これは写真家として一つのテーマを完成させる過程なのだそうだ.もう少し作家の意図を裏切って斜めに撮ってみたらどうなるかが気になったが、それは次のステップなのだろう.

 メインのゲストは鳥取から来られた陰山光雅さん.すでにベテランの方だが、日本と日本人の光景を記録するというテーマで様々な都市の光景と人々の姿が綺麗なプリントに焼き付けられている.秋葉原の風景や、放課後の小学校などで人々の表情がとても印象的.被写体の表情を引き出すためには大胆に踏み込んで撮っているそうだ.そのためにトラブルがなかった訳ではないそうだが、概ね成功しているのはご本人のお人柄なのだろう.表現手段としての銀塩プリントの良さを強調されていた.拝見した写真集と見比べるとやはり本物のプリントの良さがわかる.

 最後に山脇さんの作品を購入してから帰宅.

 本日作品が届いたので早速飾る.