スチームボーイ

::STEAMBOY::
 巨匠大友克洋の作品。大友というとわたしは彼の昔の作品集「ハイウェイスター」などを思い出す。気の利いた小品が多くとても気に入っていた。彼はその後「アキラ」の連載を始めて複雑な展開の長い、長い長編を書くようになった。このころから私は彼のマニアックなストーリーについていけなくなり遠ざかるようになった。しかしこのマニアックさがうけたのか大友はSFコミックの第一人者になったようだ。


 昨年子供と映画を見に行こう、となって適当な作品を探したらちょうどこの作品の封切り日。早速出かけてきた。見た感想は宣伝文句通りの大冒険活劇。しかし随所にアニメならではのスケールの大きい仕掛けとおもちゃ(機械)がふんだんにでてきて楽しめた。しかし自分なりにおもしろいと思ったのは登場人物の構成。主人公の少年レイは機械好きの子供。祖父は発明家で蒸気を閉じこめて大出力を生むスチームボールを発明した。この秘密スチームボールを巡ってアメリカの富豪とイギリスの国家機関が争奪戦を繰り広げる。その背景に科学は人間の幸福に役立てるとものと信じるレイの祖父と科学を通じて人間を支配しようとする父との反目がある。またスチームボールを追う国家警察の御用学者と自由な発想を持つ祖父を評して「独創性」を挙げるシーンが印象にのこる。科学観の対立を描いた単純なストーリーなのだが鉄腕アトムを見て科学者を目指した(?)私にとっては、孤独だが独創性を守る頑固な科学者像をレイの祖父に託した設定が私を原点に引き戻してくれた一作だ。

 考えてみるとレイの祖父は子供向けの科学者のイメージの典型だ、エジソン、ファーブル、メンデルなどの科学者、アトムを生んだ天馬博士、はたまたドクタースランプまで。つくづく科学者って変わった人、というイメージを子供の時から植え付けられているということを今になって再認識した。


今日のお花