セールスマンとしての科学者

 今回二つの学会に参加して感じたことがもう一つある。シドニーは日本に近いこともあり日本人が多かったが十分に学会参加の機会を活用できていたのだろうかという疑問だ。

 私が考える学会参加の目的は二つある。第一は普段会わない海外の研究者と直接あって話すこと。そして第二は自分の仕事を評価しうる人に見てもらい評価してもらうことだ。そのためにはまず誰に見てもらうか、ターゲットを参加者名簿からさがし出して学会の初めから話かけるチャンスをねらうことが大事だとおもう。お目当ての人は忙しいかもしれない。発表後にすぐ姿をくらますかもしれない。見つけて自己紹介して質問したらすぐに自分のポスターまで引っ張って話を聞いてもらうぐらいの強引さは必要だ。ほめてくれても外交辞令なのか、コメントの中に大事な批判が潜んでいないのかよく考えることも大事だ。このような営業努力あってこそ自分の仕事の理解者を世界中に広げることができるのだと思う。研究者は個人経営の自営業のようなところがあるが営業の仕事まで手を抜かず努力しないと大切な商品を高く売ることは難しい。

 同一研究室の参加者が多いと同窓会状態になる。日本の学会によく見られるのだが身内との親交に身を入れすぎると海外にきた本当の意味を忘れてしまう畏れがある。今回の学会で気になったのは残念ながら同窓会や修学旅行気分の人が見られたことだ。ポスター発表の時間は限られているのでその短い時間を利用して最大限のアピールをはからなくては出張のコストと時間に値するとは言えないだろう。

これから初めての国際学会に出かけるに覚えておいてほしいことをもう一度繰り返そう。

  1. 研究者としての自分を売り込む機会と心得て観光は二の次とすること。
  2. 自分のお目当ての研究者をリストアップすること、その人を見つけたら自己アピールの術を工夫すること。
  3. 挨拶の仕方に注意。相手の目を見てゆっくり明快に話すこと。
  4. 相手の名前と所属をよく覚えること。自分の知らない名前でも実は立派な科学者かもしれない。また若い学生でも数年後にはラボを構える大物になるかもしれない。
  5. 良い発表はしっかり記憶に残るものだ。学会発表を機会に個人的なつながりに発展するかもしれない。人との出会いを大事にすること。

あなたの海外デビューが実り多いものになるように!