バイクメッセンジャー

 しばらく出張で東京にいた。人混みと車で息が詰まりそうなのだがその中でも人は生活しなければならない。ビルの谷間で見つけたこの自転車、おそらくバイクメッセンジャーのものだろう。変速機なしのシングルスピードでブレーキも1つだけ。ブランド名も書かれていないフレームのトップチューブは停止するときにライダーがまたがる位置だけ塗装がはげている。金属むき出しのブルホーンバーのハンドルは磨かれて光っている。わずかに見えるハブのDura Aceのロゴが信頼できるパーツが選ばれている事を示している。シンプルだが良く手入れをされて使い込まれた「道具」の放つオーラを感じて写真を撮らせてもらった。ロックもかけず大丈夫かなと心配になったが気がつくと少し離れたベンチで持ち主らしい若者が携帯で業務連絡とおぼしき会話をしている。きつい仕事のはずだが集中して生き生きとした眼をしていた。