コルトレーンの生涯

コルトレーンの生涯―モダンジャズ・伝説の巨人 (学研M文庫)

コルトレーンの生涯―モダンジャズ・伝説の巨人 (学研M文庫)

 昨年暮れに通勤中に読んだ。もちろんそのときはiPodコルトレーンの曲を流しっぱなし。おかげで改めて聴き直すことができた。

 さてこの本はジョン・コルトレーンの伝記を、彼を取り巻く人々や同時代の音楽家、評論家、それから彼の妻や愛人の証言で記述したものだ。もっとコルトレーンを崇拝する熱烈なファンが書いたならトーンは違っただろう。著者の評価や意見が前面に出ていないので作品としてのインパクトはそれほど強くなく、淡々と書きつづられている。

その中で印象に残ったビル・コスビーとのエピソード(297ページ)

 もっとっも成功した黒人のコメディアンとして現在でも活躍しているビル・コスビーは若いころコルトレーンと顔なじみだったそうだ。コルトレーンが「バードランド」で演奏しているところを訪ねてきたコスビーにコルトレーンが「ビル、私はちょっと抜けるからその間お客様をエンターテインしてくれるかい」と頼んだ。そんなときビルはコルトレーンのテナーを自分の声で物まねして客を楽しませたそうだ(もちろん架空のテナー・サックスを抱えてだ!)。そんなある日ビルはコルトレーンが現れる前にステージに上がり、客の前でサイドメン達とセッションを始めた。観客が熱狂し始めたとき後ろから本物のコルトレーンが現れて、コスビーの動作にユニゾンさせてテナーを吹く。観客は大喝采。
 こんなショーは楽しかっただろうな。残念ながら彼らの競演アルバムは残されていない。