東京大学コレクション―写真家上田義彦のマニエリスム博物誌


 出張先の駅で見つけた魅力的なポスター。幸い1時間の余裕があったので立ち寄る。企画は大学博物館の収蔵品を写真家上田義彦氏が撮影した写真作品。博物館と言えば薄暗い部屋で黴くさい陳列物を連想するが、写真のフィルターを通してあらたな命を吹き込まれ、いきいきした標本達の姿が楽しい。作品の中には石膏の数理模型も含まれる。杉本博司氏の作品で有名だが上田氏は別の模型を選んでいる。

 博物館は広くはないが人が少なく、心を落ち着けて静かに鑑賞できる。展示されている写真はおそらくインクジェットプリンターで印刷されており、うまいライティングで映えている。最近大きな美術館でもライティングが下手で作品が台無しになる例をよく見るのでここのように丁寧な展示はとても好感が持てる。

 しかし写真が良いのは本物の迫力あってのこと。隣接する部屋では写真のモデルとなった骨格標本がコンパクトに展示されている。象、サイ、などの頭骨は一見の価値あり。

 この博物館は大学の専門家の支援に加えて展示のスペシャリストも参加して、見せること、伝えることに工夫が凝らされている。今回は大学の端から端までを駆け足で往復してのわずか30分の見学だったがまた機会を見て立ち寄りたい。これだけのものをただで見せてもらえるのはお得です。

追記上田義彦さんてコマーシャルフォトで高名な方だったんですね。