加藤紘一

テロルの真犯人

テロルの真犯人

 2006年8月16日、小泉首相靖国神社に参拝したその日に加藤紘一氏の実家が放火され全焼した。このテロ行為について加藤氏が思いをつづった書。と思って読んだのだが、自殺を試みた老右翼活動家以外に犯行につながる背景がいまだにあきらかにされていない時点で加糖しもそれ以上の推測は述べず新しい事実があきらかにされているわけではない。本書はあまり綿密に構成されているとは言えず、彼の思うところを口述したものをおそらくライターが一気に書き上げたものと思われる。しかし本書の価値は、中盤で綴られる加藤氏が語る自分の生い立ちだ。小泉首相の方針には批判的だった加藤氏の政治姿勢は地方政治家の家に生まれ、外務省で中国の専門家として訓練を積み日中国交正常化を見届るうちに培われたと述べている。政治家の家業を継ぐことを意識していただだろう加藤氏が大学と若手官僚時代に自分のゆくべき道を見定め、必要な経験を積んでいったプロセスは参考になる。