NHKスペシャル|100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜

 先ほど放送が終わったところ。グレゴリー・ペレルマンやその先人たちがポアンカレ予想を巡って演じたドラマを解説。ペレルマンの変人ぶりは強調されていたが、それよりも彼の証明にいたるまでの思考の流れをわかりやすく解説してくれた(わかった気になっただけなのだが)。

 自分なりに受け取った理解をまとめると

位相幾何学の始祖ポアンカレ「宇宙空間はボールの中のように空間は連続しているにちがいない!」

 他のひと「うーん、あたりまえじゃん。証明も簡単そうなのでやってみるか。」
     「あれ?以外と難しいな。うん、もうやめた!」

 難問の噂は高まり解明に挑戦するものは皆返り討ちに逢う。そのうち人々は真正面からではない攻略法を工夫し出す。

サーストン「幾何化予想を使えばいいかも!」
ハミルトン「リッチー・フローという手があるぞ!」

 そのうちプレプリントサーバーarXiv.org e-Print archiveにアップされたペレルマンの論文が証明に成功しているのかもしれないとの噂が広がりだした。

「また解けた!のうわさ話か。どうせすぐ間違いがみつかるさ・・・。」
「あれ?どこを探しても証明に間違いはないぞ。でもこれって本当に正しいの?」

 誰もその証明が完璧であるかについて容易に確認できなかった。

「間違いとは言えないけれどさりとて正しいと確信を持てない」という話はバイオロジーでも少なくない。私に敬虔で言えば直感で受け入れがたいうますぎるお話は慎重に聞くことにしている。どうやらこれまでの位相幾何学ではなく微分幾何学の方法を用いた証明だったので理解できる人が少なかったと言うことらしい。アメリカから帰国して7年間、ロシアの研究所で孤独に取り組んだ成果だったそうだ。議論の相手もなくそこまでの論文をよくぞ書き上げたものだと感心する。

 面白かったのはペレルマンアメリカに留学した時に彼が書いた論文に対して指導教官が「もう少し丁寧にわかりやすく書き直してみてはどうか?」と提案したのに対してペレルマンは頑として一言一句変えさせなかったという話だ。その恩師はペレルマンモーツァルトにたとえていた。うーん、自分なら共著になる論文には容赦なく手を加えて書き直させるのだが・・・。

 天才伝説の背景とその記録として優れた番組だった。生物学というアバウトな迫れ世界とは異質の、本当の「真理」に迫れる世界を垣間見せてくれた。