ジョーカー

気持ちのよい映画ではない。

幼児虐待と精神病歴をもつ中年男が虐げられる。コメディアンとして認められたいという願望が叶わず、突発的に起きた事件をきっかけに社会に復讐をはじめた。彼の行為は不公平に不満を持つ市民のカタルシスを解放し暴動のシンボルになる。社会的弱者の理不尽な怒りはジョーカーがまとっていたピエロの化粧を旗印に解放され、大暴動に発展する。現実の世界ではフランスの騒乱は黄色いベストが象徴した。香港の反政府運動はマスクをつけた人々により過激な暴動に発展している。香港政府がマスクの着用を禁じたのは本人特定のためだけではなくマスクが反乱のシンボルになることを嫌ったためだったのではないだろうか。

 最後はジョーカーが監獄(精神病院?)に入れられるところで終わる。反逆のシンボルとなったジョーカーは反体制の民衆のシンボルであり続け、その後のバットマンのストーリーに続く。監獄に幽閉された悪のシンボルはハンニバルレクターにも通じる。単なる悪と暴力の映画ではなく、社会の底流にある怒りを具現化したところが世界的な指示を受けている理由だろう。

観たことを後悔はしない。

(追記)ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技は強烈だったがそれに加えて彼の肉体に注目。筋肉も脂肪も絞りに絞っているのに加えて肩や肋骨が変にゆがんで見える事で病的な印象を際立たせている。並大抵の努力であのような病んだ身体は作れないだろう。凄い。

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