さよならおチネリ君

 先日自慢したばかりの私のチネリ、唐突なお別れになってしまいました。事故に遭ったのです。


 昨日は出張後の身体を目覚めさせるために自転車通勤。とても暖かく気持ちよい朝だった。そして帰り。9時過ぎにラボを出てライトを点けて夜道を疾走する。私は車のない時間帯の夜道を走るのが好きだ。遠景に惑わされることなくペダルを回すことに集中できる。時折メーターを見て速度とペダル回転数、そして心拍を見る。1週間休んでいた割にはとても調子が良い。気温が上がったせいだろうか。


 いつも帰りに利用している海上の橋を渡り、港湾地帯の狭い測道に入る。ここは夜はほとんど車がいない道だ。それを直進して大きな道に突き当たるT字路に向かう。右からに車に注意を払いつつ左折に向けて減速して正面を見たら、なんと、車がこちらにめがけて向かっているではないか。左に逃げながらも右半身が車体に当たり前にすっ飛ぶ。


 事故直後から妙に頭は覚醒していて自分が宙を飛んだら頭はどうなるか、ヘルメットの効果を試すときが来たな、などと考えていた。直後に路面に落ち、そのままうつぶせに横たわる。車は停止して人が出てくる音を聞いた。頭は覚醒したままだ。頭への衝撃は少ないことを確信する。うつぶせのまま手足に神経を集中させて、痛み、外傷の有無、動かせるか、などをチェック。右足右手が痛むが障害の程度はわからない。しばらくじっとしておくことにしてその姿勢を維持。様子を見に来た人に救急車と警察への連絡を頼む。同時にはっきりしゃべることで意識には問題ないことを知らせる。


 病院に運ばれレントゲン撮影の後医師の診断を受ける。幸い骨に異常は見られないようだ。しかし痛みはあるので油断は禁物。そのまま11時頃自宅に戻る。


 自宅に自転車が届けられた。それを見て愕然。チネリ自慢のメッキのシートステイが曲がり、シートチューブの溶接は完全に破断。これで復活の見込みは完全に消えた。チネリのフレームは壊れ、私の骨は折れずに済んだ。守ってくれたのだろうか。


 何万キロ走れるかな、などと考えていた所なのに僕のおチネリ君は逝ってしまった。風になって走ることを教えてくれた。どうもありがとう。