足跡

 今日は御世話になっているT先生がある賞を受けられることになり、授賞式に行って来た。研究者が評価に値する仕事をなす条件について考えさせられた。困難だが重要な課題を見いだし、時間がかかっても解決に向けて努力を怠らないこと、だろう。多くの研究者の場合、課題の選定の段階で安易で陳腐な問題を選んでしまったり、逆に大きな問題に夢を見すぎて解決への具体的な道筋を見いだせない、というところでつまづくことが多いのではないだろうか。


 T先生からは、ささやかな発見を機に時間をかけて大きな仕事に発展させて行かれた過程を見せて頂き、継続性、忍耐、そして独自な切り口の見つけ方、の積み重ねが大きな成果につながるということを教えられた。また定説にとらわれすぎることなく自分の観察事実を元に考えることを強調されていた。


 実験技術は教科書と論文から容易に学ぶことができるので器用な研究者は多い。しかし科学者としてどうあるべきか、は一流の科学者とじかにふれあうことを通じてのみ学ぶことができると痛感する。インターネット全盛の時代でも人との交流の価値は薄れない。だから科学者は旅行をして他流試合に挑むことをおそれてはいけないのだ。