猩々蠅

同業者の集まる研究集会に行ってきた。二年に一回行われるのだが前回にもまして参加者が多く、活気にあふれた集まりだった。感想をいくつか書き留めておく。

  1. 発表の内容は前にも増して良くなっていたと思う。口頭発表が数多くあったがよく準備された話ばかりで退屈はしなかった。多少はうつらうつらしたのだがそれでもちゃんと聞いていたんですよ。ホント!
  2. 参加者の年齢層はとても若い。平均は30才をちょっと越えるくらいではなかろうか?ミキサーの際の乾杯の音頭を誰がとるかという段になって気がついたのだが、自分より年上の人間が数えるほどしかいない。トップ10入り間近。若い学会というのは喜ばしいことなのだが、一方で年寄りの悪口を言ってきた自分としては決まりが悪い。しかしここは開き直るしかない。
  3. 英語の発表をした人が1/3程度いた。良くできた発表が多かった。英語でもやって見れば案外うまくできるじゃないかと思った人は多いのではないか。もしわかりにくい発表があったとしたらそれは英語でやったせいではなく、発表の構成自身に問題があったのだと思う。英語は論理的な思考に適した言葉なので慣れれば研究発表には使いやすいと思う。
  4. 立ち上がって質問するのは大体同じメンバー。それも年寄り。こういう風に立ち上がる人は年をとったからこうなったのではなく、昔からそうだった(年寄りの私は知っている)。今や多数を占める20台の人たちは今こそ立ち上がって声を上げなくてはこの先ずっと「静かなる聴衆」の立場は変わらないと思う。何を聞いたら良いのかがわからないのだろうか?ならばもっと考えながら聞く訓練をしてほしいと思う。自分の身近な人にはそのように伝えたのだが残念ながら立ち上がる者は少なかった。人前で疑義を示し、自分の意見を述べることは科学者としての大事な資格の一つだ。そして自分のvisibilityをあげる事は研究者社会で生き延びる手だてだ。そのようなチャンスを生かすために学会に参加してもらう事をわかってもらいたい。
  5. 余談だが先日のゲノムの会で「インフォマティックスの訓練が可能なのは何歳までか」という質問に、「学生の間、遅くともポスドク。職に就いて守りに入った人間はもう訓練しても無理」という解答だった。研究者の器が決まるのは大学院生の間だ。それ以降はその器にどれだけのものを盛り込めるかという問題になる。私は大学院を終えた人の器自身に手を加えることをはしない(できない)。

 ともあれ活気あふれる三日間だった。世話人の労を執ってくださった方々に感謝します。