Bad Schandau

Day 1

 27日はチェコを離れ鉄道でドイツ入り。鉄道は実は車より時間がかかるのだがゆったりした座席でのんびりと車窓からの風景を楽しめるのは鉄道ならではだ。本日はドレスデンの手前にある保養地 Bad Schandauが目的地だ。

 ここはザクセンのスイスといわれる砂岩地帯で第二次大戦前から人工手段を用いず岩塔を登り切る厳しいルールの元で当時として世界最高レベルのフリークライミングが行われていた所だ。ザクセン出身のクライマー、フリッツ・ヴィースナーがアメリカに高度なフリークライミングをもたらしたとも聞いていたので是非とも見ておきたかった所だ。砂岩地帯に入ると川沿いに急峻な断崖が現れ、わくわくしてくる。

 ところが駅に着いてびっくり。両替所がないのだ。手元にはチェコの通貨(クローネ)と円のみ。トイレにはいるのにもお金がいる国だ。ユーロの現金なしでは何もできない。売店のおばちゃんに聞くと「この地域に外貨を交換できる所はない!」とか。 ここは観光地なのに そんなはずはない、ととにかく市内を目指す。お金がないので歩いて河をわたり街を目指す。2kmあまりなのだが日中の炎天下、目がつり上がってきた女房と不平たらたらの子供達をなだめすかして歩かせる。市内に入り銀行を見つけて駆け込むがそこで宣告されたのは「ここでは外貨両替は行っておりません。お金がいるならドレスデンまでいけばいくらでもかえられます」。そんな事言われても現金がないのにどうやってドレスデンまで行けばいいのだ。しばし呆然としていたが気を取り直して現金引き出し機を調べるとPlus Systemでキャッシングができるようだ。はらはらしながら操作してなんとか当座のユーロを手にした。

 次に困ったのは言葉。ここの人たちは外国人を受け入れる事がまだあまりないようで英語を話せる人が少ない。ツーリストインフォメーションの職員ですらだ。当然食事のメニューもドイツ語のみ。そこで電子辞書を引きながらメニューと格闘する羽目になる。ウェイトレスの人も辛抱強く辞書片手に説明してくれてなんとかザクセン料理を注文する事ができた。ドイツといえばソーセージ、というイメージがあるがソーセージあるか?と聞くと「ない」という冷たい返事。ザクセン料理には腸詰めはないようだ。

Day 2

 今日はハイキング。朝Informationで情報と地図を仕入れて船に乗る。下流へ1時間ほど下った所にあるStadt Wehlenで降りて歩き出す。日向はとても暑いのだが森にはいったとたんにひんやりと涼しくなる。緩やかな道を子供の足でゆっくりと1時間ほど歩く。苔に覆われた岩が現れる。一部にはボルトが打ち込まれているがその数がとてつもなく少ない。5-10mに一本の間隔だ。クラックに挟み込まれたスリングも見られるがどれくらいの強度があるのだろうか?30mほどのルートに確認できたのは3本のボルトと1本のスリングのみ。岩は薄かぶり、5.11はありそうだ。こんな道草を食いながらがBasteiに到着。岩塔群が立ち並ぶ名所でここだけはホテルと土産物屋が並んでいる。谷を見下ろすとここでもクライマーが見られる。アメリカで見たブライスキャニオンのような感じだ。50mはあろうきれいなアレートをロープいっぱいのばしてテラスで上半身裸で後続をビレイしているクライマーがいる。目視で途中に確認できたランナーは1本のみ。ちょっとだけ岩にさわって登ってみるが柔らかい砂岩で岩の表面には砂が浮いていおり、フレークは欠けそうだ。カムやナッツは岩を削り、不規則に開いたクラックでは安定した確保支点にはなりにくい。単に力任せで登るだけではなく、岩を壊さないようなデリケート登り方が要求されるだろう。ユタのキャニオンランドにも似てとても楽しそうな所だが岩にとりついたら絶対に落ちない技量を持つものだけが遊ぶ事を許されたクライマーの楽園だ。

 帰路につく電車の駅でドレスデン方面に帰る若いクライマーを見かける。粗末なロープに靴とスリング程度しか入っていないだろう小さなリュック。わずかな装備で岩に遊ばせてもらうシンプルなクライミングの原点を見た。