ラストソングと共に

 「久世光彦氏を悼む」というタイトルで日経の3/4朝刊に川上弘美さんの追悼文が掲載された。

 出だしはこう始まる。

久世さんの小説は、文章がきもちいい。目で追うのもいいが、声に出して読むならば、もっときもちいい。

 そして久世さんが死についてこだわりを持ち、様々な死を小説で描き、自分の死に方も考えていた事を指摘する。

 何冊か、本を読み返していて居て、驚いている。久世さんは、なんて「死ぬ」事ばかり書いている作家なんだろう。それもかるがると。軽く、ではない。

 そしてそんなに死について書いたばっかりに死期を迎えてしまったと非難する。

 言霊というものがこの世にあるのだから。こんなまっすぐに、きちんと死と向かいあうような事は、ただ頭の中だけで思っていればよかったのに。言葉にしたとたんに、それはものすごく近いものになってしまう。だけで、死にたくないから言葉を出しおしむなんて、そんな意地汚い事は僕はしないよ。久世さんは言うだろうな。

 最後はこう結ばれている。

久世さん、まだ行かないでくださいな。ちょっと頭をかいて、やあ、なんて小さく手を上げながら、こっちに戻って来てくださいな。

 
 コンパクトにまとめられた名文だ。川上さんの独特なひらがな交じりの言葉遣いが余韻を残している。

 さて久世光彦氏と川上弘美氏の接点が何かわからず調べてみました。
http://www.wowow.co.jp/drama_anime/sensei/contents.html。彼女の作品の映像化を久世さんが演出されていました。