怖い絵

 ところで実を言うと私は久世光彦氏の作品を良くは知らない。そこで読んだのがこの本。
怖い絵
 著者自身を思わせる若者の少年期から青年期にかけての煩悩*1に満ちた日々をモチーフに描いている。青春時代の暗い気持ちを描いた記述にはページをめくるたびに頷いてしまう。しかし話があまりに小説的なのでかなり創作が入っているだろう。もしかしたらすべて創作かもしれない。そして創作上の体験に自分自身を模した人物を重ね合わせる事で、読者に現実ではない久世光彦像を与えることが作者の意図なのかもしれない、と深読みしてしまった。それほどに引き込まれる短編ばかりだ。

 男性は共感を持って支持されるだろうと思ったが、さて女性が読んだらどう思うのか、是非感想を聞いてみたいと思うのだが。

*1:煩悩といえば女性の事と決まっている