オブザべーション

 クライミングの大会では選手は制限時間内で一回だけのトライを許される。他の選手の登りは見ることが出来ないので事前のオブザべーションでルートの構成を理解して攻め方を決めておかなくてはいけない。ルートの分析能力と記憶力が試される。調べ方が人それぞれ異なっていて面白い。

 この選手のようにじっと双眼鏡でホールド・スタンスをチェックする人、手足を動かして体にイメージを刻んでいく人、ノートを手に細かく記録をつける人、あちこち動き回って様々な角度から観察する人。脳にルートの記憶を刻む方法が人様々だ。短期記憶を焼き付けて、登る前に肉体の動作に変換しておかなくてはいけないのだ。選手の頭の中をMRIで覗いたらさぞかし面白い物がみれることだろう。ちなみに唯一完登を決めた松島選手や上位に食い込んだ選手の多くはあまり体を動かさず、じっとルートを見つめている人が多かったようだ。クライミングは肉体を使ったチェスとも言うべき頭脳のスポーツでもある。