パオロ・ベッティーニ

 遅ればせながら世界選手権、ジロ・ディ・ロンバルディアのビデオを見た(Uさんthanks!)。どちらも優勝はベッティーニ。それもレースの終盤を完全に仕切っての勝利。

 世界選手権では仲間を逃げに参加させ、合流したら自分で軽くアタック、最終回ではバッランの牽引で集団を崩壊させ、パオリーニの先導で自ら先頭に立って逃げる逃げる。それでも逃げ切れないと悟ると今度はレベリンがエスケープにでている間に脚を休めて大集団で待機。このままに集団ゴールだと分が悪いところだったが最後1キロでスペインのサンチェス、バルベルデのペアが抜け出すところを見逃さずツァベルと共に食らいつく。その後の追走をスペインのフロレンシオが遮断し4人の勝負になったところで最後尾からまくって抜き去る。ひとつのレースでめぐるましく変化する展開を支配しながらもシナリオ通りに行かない場合でも状況に最適に対応し、勝利する。自転車王国である母国のためにも、身を粉にして働いた仲間のためにも、自分自身のためにも絶対に勝たなくてはならない状況で勝つ。凄すぎ、かっこよすぎ。

 ゴールしてから表彰台までの彼のはしゃぎっぷりが彼の人柄を表している。強烈な個性がありながらもアシストの下積みを経て、今でもレースによっては人のために働く。愛されるレーサーなんだろう。そういえば昨年見たHEWサイクラシックスでも調子が悪かった彼は若手のために集団を引く役回りを果たしていた。

 ロンバルディアでは一転してアシストが切れた後の逃げ集団を一人で仕切る。脚がなくなって終わりかけたディルーカの最後のアタックの助けを借りてのカウンターアタックで逃げ集団を分断して逃げるところが凄い。下りのコーナーぎりぎりの危険な、しかし計算されたターンの連続は迫力満点。あれで時速70kmは越えているんだろうなー。そして最後の峠で残り一人の敵を切り捨てて単独ゴール。世界選手権から3週間目、その間に兄を交通事故で亡くすという悲劇を体験していたベッティーニは今度は涙を流しながらゴールして偉大なチャンピオンとしてのシーズンを締めくくった。

 強力なボスでありながらアシストの仕事にあぐらをかかず自ら仕事をし、あらゆる展開に適応できる能力を持つ。現代最強のワンデイレーサーでありなおかつ最も魅力あふれるレーサーがパオロ・ベッティーニだ。