男子の本懐

男子の本懐

男子の本懐

 城山三郎氏が亡くなってから彼の著作を読んだ事がなかった事を思い出し、出世作とされる本書を読んでみた。昭和初期に金本位制に踏み切って日本経済の国際化に舵を切った首相 濱口 雄幸と大蔵大臣 井上準之助を描いた作品だ。初志貫徹で経済改革を断行した頑固な二人が相次いで凶弾に倒れた事で劇的な作品に仕立てられている。しかし彼らが去った後には政策は逆行したために彼らの政策が有効なものだったのかは、正直にいって私には判断ができない。経済小説家として名をはせた城山氏にしては政策面の評価が甘く思えるのは、これが戦前の出来事で現代の基準で評価することが適切ではなかったためかもしれない。ともあれこれは経済小説ではなく、悲劇的な最期を遂げた政治家の人物伝だ。☆は無しだが今度は現代を舞台にした作品を読んでみよう。

 城山氏は「私の自叙伝」に原稿を用意しておられたそうなのだが早すぎた死去により掲載は取りやめになったそうだ。別の形で公開される事を期待する。