iTunes U

 不調だったiPod nanoがとうとう再起動できなくなり後継機を探していた。MacWorld 2008での発表を待ったがiPhoneは当分日本では発売されそうになく、薄型のMacBookは気になるが特に急いで買う理由もないのでしばらく様子を見る事にする。丁度iPod Touchに使えるメールソフトやメモ機能がついてくることになったのでLAN機能を利用してPCを持ち歩かなくてもよいかもと期待して購入。

 16GBの大容量に何を入れるか?先日のスイス出張の時にEHさんに聞いた話。「アメリカのMITなどではとても質の高い講義をフリーで公開している。スイスの大学生にもまずこれを受講させて、足りない部分だけは自前の講義で補えば良いではないか。」この提案は教官たちには評判がよくなかったらしいが、確かに各学生にiPodを貸し出して受講させる方がコスト的に安くつくかも。実際に視聴してみたがRobert WeinbergとEric Landerが生化学と遺伝学を分担して基本的な生物学の講義をしてくれる。それはそれはハイ・クオリティーだ。階段教室を歩き回りながら黒板に板書して、ジョークを交えながら迫力満点で講義する。こんな講義を生で聞けるならもう一度大学生になりたいくらい。MITでは他にもWalter Lewinによる物理の講義も大人気で、確かに改めて物理学のおもしろさを味あわせてくれる*1

通勤時間に視聴するのが便利。これまで視聴したもの

MIT OpenCourseWare | Free Online Course Materials

MIT Open Course Ware


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Introduction to Biologyの講義。WeinbergはBiochemistryの4まで視聴したところ。化学結合とは何か、というところから始めて核酸の構造と機能的な意味などを懇切丁寧に話してくれる。こんな説明の仕方があったのかと眼から鱗の話が一杯。一方のLanderはメンデルの法則の発見を19世紀中盤の時代背景から話してくれた。メンデルの論文はDawinにも献呈されたそうだが読まれた形跡はなかったとか。

 iPodに落とすにはiTunes Uが便利なのだがOCWのサイトに行くと凄い数の講義資料が公開されている。こんなのがタダで手にはいるなら高い学費を払う必要ないじゃないの、と思うくらい。しかしこうして質の高い講義を公開することは大学の教育能力の宣伝としては極めて有効だ。

もう一本お奨めはYale大学の一般向け講義

   "Yale Science"で話していたTien XueTian Xuによる"The Next State of the Human Genome"。彼な中国人なのだが自分が米国に来たいきさつとか、現在の研究の流れ、そしていま中国に開いたラボでの大規模なマウスの変異体スクリーンの話など音声だけの講義だがいまの彼が何をしようとしているのかよくわかる話だった。昔FLY MEETINGで彼の話を聞いたことがあるがそのときもジョークが決まってたな。

 日本でも東大などでpodcastの公開が始まっているがまだ数は少ない。大学間の競争が激しくなる現在、ノウハウを隠すよりも見せることでより良い学生と教官を集めることができるのではないだろうか。

*1:息子にLewinの講義を視聴するならiPodを買ってやるといったが残念ながら釣られなかった