女性議員と女性研究者

 いやはや自民党はこの予定外の選挙に合わせて短期間に実にたくさんの候補者を発掘してきたものだ。「女性刺客」の話題づくりをねらった戦略の結果でもあろうが国政に打って出る素養と度量のある人材がまだまだいる、というのが感想だ。有権者の半分は女性なので女性議員が半分いてもおかしくはないわけで適正バランスに向けてまだまだ調整中というべきだろう。

 しかしよく見ると人材の層はまだ厚いわけではない。財務官僚の片山さつき氏は入省時から話題をさらっていたようだし、大学教授の猪口邦子氏も国連軍縮会議の政府代表で派遣されていた。今回岐阜1区に出馬する佐藤ゆかり氏自民党政務調査会財政改革研究会アドバイザーをつとめていた。つまり彼らはすでに自民党の人材リストにストックされていたわけだ。いずれの方も現在のお仕事で活躍されている方なので当選すれば議会で活躍されることだろう。しかし限られた数の人材をぎりぎりで使い回している、という感は免れない。彼らは退職するわけで、財務省上智大、投資会社(クレディ・スイス・ファースト・ボストン)は貴重な人材を失うことになる。もちろんポストが空けばそこを埋める若い人材が出てくるだろうがその発掘は容易でないことを危惧する。

 翻って教育・研究関係でも女性比率は低い状況が続いている。日本科学者会議, 女性研究者・技術者のページの資料を見ると女性の大学院生が25%を越えた程度、一方で教官の比率は15%程度だ。しかし女性教官の比率は文系・私大で高く、理系・国立大で低い。大学院生にはかなり多くの女性がいるにもかかわらず教官にまでプロモートされる率は多くない。また数少ない女性教官は大学・学会の様々な委員会などにかり出されることが多い。委員会などではたいてい一定数の女性を入れておきたいのだが、人材が限られているのでいつも同じ人に声がかかることが多い。彼らの貴重な研究・教育の時間が割かれて、何よりもアイデアと活力が消耗してしまわないかが気になる。この心配が杞憂であることを願う。

 女性リーダーの数が院生レベルでの比率に比べて少ないのはリーダーを目指す人が少ないから、というのが大きな理由のひとつだ。なぜ上を目指す女性が少ないかの分析は私が断定的にできるものではないがいずれ日を改めて考えてみたい。ただ一点だけ述べてみたい。

 リーダーになることはそれ自体が目的ではない。目的達成の手段だ。目的を明確に持って、人に的確にアピールできる人がリーダーを目指すことができる。科学の場においてその目的とは、自分なりに理想的なサイエンスを実践することだ。

 サイエンスは、その裾野に多様な*1イデアを許容することで発展してきた。経験を積んで独立したアイデアを育みだした研究者がその夢の実現に向けて独立したユニットをひきいることは当然の流れだ。

 研究の価値を決める大きな要因は独創性だ。研究リーダーを目指す人にはまずオリジナリティーの高い、夢のあるアイデアを育むことから初めてほしいと思います。あっ、これは男女に関係ないことでしたね。

*1:しかし決して独りよがりではない