Doping Scandal?

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引退したばかりのランス・アームストロングに対してのドーピングスキャンダル

 何ともやりきれない、ひどい話だ。私がひどいと思うのはドーピング検査の情報が研究機関からリークしたことと、それに群がってまだ未確認の情報をランス嫌いのフランス国民への受けをねらったスポ−ツ誌が大々的に報じたことである。

 ツールドフランスを圧倒的な7連覇で飾ったばかりのランスに対するドーピング疑惑の追及は今に始まったばかりではないのだが今回は報道の内容にいろいろ怪しげな背景がある。まだ証拠と事実の提示がなされていない段階なので今後の展開を待たなくてはならないが気になるので事実関係をまとめる。

背景

  1. アメリカのチームに属するアメリカ人、ランス・アームストロングは世界最高のステージレース、ツールドフランスを過去7年間圧倒的な力で勝ち続けてきた。過去ツールで5勝したレーサーは4人いるがレースのレベルが上がった現代で7連覇するというのは群を抜いている。
  2. フランスのスポーツ紙レキップが報じた所によると、ランスが初優勝を飾った99年のツール参加者の尿サンプルをフランスの国立反ドーピング研究所(LNDD)のスタッフが検査したところ12サンプルからEPOが検出され、そのうち6サンプルはランスのものだったということ。

検出方法

natureの記事

Nature 405, 635 (08 June 2000); doi:10.1038/35015164
Recombinant erythropoietin in urine

FRAN?OISE LASNE AND JACQUES DE CEAURRIZ
National Anti-Doping Laboratory, 92290 Ch?tenay-Malabry, France

Erythropoietin is a hormone that stimulates the production of new red blood cells (erythropoiesis). Although athletes use recombinant human erythropoietin illicitly to boost the delivery of oxygen to the tissues and enhance their performance in endurance sports, this widespread doping practice cannot be controlled in the absence of a reliable analytical procedure to monitor it. Here we describe a new technique for detecting this drug in urine following its recent administration.

この論文に記載されている方法は、1)ヒトEPOの存在を抗体で検出、2)組みかえ体のEPOとヒト内在性EPOを区別することが可能、とされている。メソッドは以下の通り。

  1. 尿サンプルを濃縮後に等電点電気泳動。これは蛋白質電荷に応じて分画する方法。
  2. その後ウエスタンブロット法によりEPOに対する抗体で検出。EPOのシグナルは電荷の異なる複数の隣接したバンドとして検出される。
  3. 組みかえ遺伝子技術で生産されたEPOとヒトの内在性EPOとは電荷の違いがあり区別が可能。

今回のランスの(?)尿サンプルのデータがどのようなものだったのか、単にEPO抗体陽性だったのか、組み替え体由来と断定できたのかは報道ではわからない。

いろいろ疑問と心配がある。

  • 技術的問題:ー20度で6年間保管されてきたサンプルのEPOが科学的に変性しなかったものだろうか?蛋白が切断をうけたり電荷が代わる化学変化を否定する科学的な根拠は与えようがないと思う。
  • 倫理的問題:科学者が一般人から研究用サンプルを提供されたときには個人情報が明るみに出ないような配慮が求められる。LNDDは国立の研究所だがそのような倫理コードは存在しないのだろうか?情報がリークしたことに対しての研究所の責任はないのか?

スポーツの未来について:ランスのドーピング疑惑を喜んで見ているのはフランス国民くらいで多くのスポーツファンは偉業達成を祝福している。過去のサンプルをほじくり出して糾弾を続けることは健全で前向きのやり方ではない。検査技術の向上は現代の選手の健全化に資するべきだ。