アクアリウム

アクアリウム (新潮文庫)

アクアリウム (新潮文庫)

 篠田節子は好きな作家だ。彼女のホラー/SFは荒唐無稽な設定と現実的な設定を組み合わせて何とも不思議な世界だ。それぞれの話が抜群に凄いというのではないのだが、強引すぎる組み合わせが彼女だけの世界を創っているのだ。この話では地底湖に棲む謎の生物というSF的な話と林道開発による自然破壊、そして環境保護運動を巡り暗躍する怪しげな人々の極めて現実的(かもしれない)話が絡み合って進行する。少し話が飛びすぎてついていくのがしんどいのが実感だ。

 私にとって彼女の小説は女たちのジハードのような現実社会だけのお話や寄り道ビアホール (講談社文庫)のようなエッセイのほうが軽快で読みやすい。一度SF路線を封印してはどうだろうかと期待しているのだが。