宮澤喜一

 またまた重量級の登場。白州次郎氏とも接点がある。吉田茂首相が講和条約制定の根回しに池田勇人大蔵大臣をアメリカに派遣した際、白州氏と宮澤氏が同行したそうだ。白州氏48才、宮澤氏30才。宮澤氏も堪能な英語を生かして交渉の前面に立つことで日本の将来を背負っていたのだろう。

  冒頭の章でこう述べられている。

 私には笈を負うて、人を押しのけてがんばろうという経験がない。自分が十分意識しない間に政治の世界に迷い込んでしまった、というのが正直な感じだ。私は本来、権力の行使にはあまり強い関心はなく、実際に自分が首相になった時のそういう信念で行動した。

 権力の頂点に立った人の言葉としてはにわかに信じがたい。

 私の勝手な想像だが宮澤氏はあまりに優秀であったがため、そして政治家の家に生まれたために、無理してがんばることなく政治に入ってこれたのではないか。そして生まれながらにして権力を行使する事を覚えたため強権を発するという意識なくして力をふるえたのではないだろうか。
 権力を行使する事を意識しないと言うことは、何のために権力が与えられるのかというもっと大事な事を考える余裕があると言うことだ。そんな宮澤氏が時代の荒波をどう乗り切ってきたかを語るのを楽しみにしたい。