それでもボクはやってない

 冒頭は駅構内での逮捕、警察への連行、拘留のシーンが続く。怒鳴りまくり被疑者の話を聞かない刑事、牢屋で同席する怪しげな人たち、主人公の絶望感、などが描かれる。怒鳴るシーンでは不快感が募り「もう出ようか」と思ったくらいだ。

 中盤からは法廷へ。廷内の手続き、裁判長の対応方針が人によって違うこと、人事異動で裁判長が交代すること、支援者の集まり、傍聴オタク、多忙な裁判所での有罪率維持の舞台裏、などが語られ最後に有罪の判決。そして控訴で終わる。

 しかし控訴審まで行ってもあそこまで苦労して出した証拠や新証言に加える事の出来る証拠が出てくるのだろうか?虚しいが大事な戦いは続く。関心の高さを反映して会場はほぼ満員。

 でも見終わっての感想は気が重く疲労感いっぱい。映画を楽しむのではなく重苦しい社会の現実を学びに2時間の授業を受けたという感じだ。周防正行監督の作と聞いて「Shall we ダンス?」の軽妙なユーモアが少しは含まれているかと思いきや、笑いも救いもない作品となっていた。これがヒットするなんて、日本人はつくづく勉強好きなんだと思いましたよ。

 主演の加瀬亮は「硫黄島からの手紙」に続く好演。繊細な若者役を続けて演じているが良い監督に恵まれた機会を生かして名優に成長して欲しい。


 しかし現実はフィクションを超える。

婦女暴行で誤認逮捕…富山県警、冤罪関係者処分せず

 富山県警が2002年、同県氷見市の男性(39)を婦女暴行容疑などで誤認逮捕した冤罪(えんざい)事件で、県警の岸田憲夫警務部長は、31日の定例記者会見で、事件を捜査した当時の関係者らを処分しない方針を明らかにした。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070131i216.htm

 もう一件、婦女暴行事件の被疑者が不起訴になった事に抗議して被害者が被疑者宅前で焼身自殺をはかった結果、検察が起訴を決めたというニュースがあった(ソースをたどれず原典不明)。この場合は難しい。最重要な証人が失われた時点で起訴しても後半を維持できるのだろうか?