信ずれば花開く

 先週、私が日本で仕事を始める時にお世話になった先生の退官講演が行われ、参加してきた。時間がたつのは早いものである。

 私の大学院時代の頃はポスドクの職などもあまりなく、研究者としての地位を得るためにはどこかの研究室のスタッフとして参加する事がほとんど唯一の道だった。なので大学院生の頃からどこのラボでなら自分の指向にあった研究ができるかを考えながら様々な方の研究スタイルとパーソナリティーを見ることにしてきた。独立されたばかりのその先生のところで職があると聞いた時、これは良いと思った。実はその先生のところでなら良い仕事ができるかもしれないと思っていたところの一つだったのだ。アメリカに残る手もあったのだが帰国することに決めた。

 "Okazaki manuevor"に象徴される正当派の生化学の流れを汲むその先生の研究スタイルは、直感派の指導者ばかりから学んできた私にとっては全く異次元のものだった。しかし最適な条件を導くまで全ての可能性を検討する生化学の手法が目の前で実践されるのは大変に勉強になった。もう一つ学んだのは忍耐力。先生はどんなピンチのときでも落ち着いて、しかしねばり強く対応していた。学生・スタッフに対しても常に温厚で、時には腹が立つこともあるだろうに決して人前で怒る事はなかった。ねばり強いスタイルの指導のおかげで才能を開発された人たちを見て「待って育てる」事の大事さを教えられた。その態度を見習って温厚であろうと努力しているのだが徳の足りない私にはまだまだ無理がある。

 退官はされたが今しばらく研究を続けられるという。是非とも今のテーマを完成させて頂きたいと思う。

この表題の言葉は良く耳にするものだが「信じざれば花ひらかず」が本当の意味だろう。この石碑で「念ずれば・・」とあるのは神社にあるからだろうか。