中条省平

 日経夕刊の裏面はいつも見ているのだがぐっと引き込まれる映画評があると思ったら必ずこの人の評論だ。

 掛け値なしの傑作である。だが、すぐにこう付け加えたくなる。不愉快な傑作である、とも。

 中略

 アカデミー助演女優賞2ノミネートされた菊池凛子の怪演(!)を筆頭に、役者も良いが、なんと言っても見事に構成された脚本をメリハリのきいた演出と編集で見せるA. G. イニャリトゥ監督の才腕が際だつ。2時間23分の長尺だがダレ場は皆無。今年有数の力作。
(シネマ万華鏡、日経 夕刊4/27)
映画評論家 中条省平

 印象に残る映画のせりふのように、出だしの第一節に思いを込めて読者を引き込もうとする意図が強く感じられる。中条氏は紹介する映画作品を厳選して納得できるものだけを紹介しているようで、彼の評価が高い作品は見に行って損はない。優れた作品にふさわしい優れた評論だ。