本日の訪問者

 オーストラリアから訪れたSくん、礼儀正しく知性豊かな大学院生だが日本滞在をフルに研究室訪問に当てて関西地区を飛び回っている。生命科学の研究者としてやっていきたいと語る若者なのだが彼の経歴を聞いて驚いた。イランの紛争地域で生まれ育ち、両親と共に難民として国を逃れてオーストラリアに移住した。そんな彼が大学院教育で奨学金を得て博士課程にまで進学できたのは相当ハードな勉学と労働があったはずだ。彼は医学生を目指していてそのまま行けば医師として安定した職と収入を得るチャンスはあったはずなのだが、基礎科学で研究する道を選んだ。学位を得たら環境が良く、勤勉でハードワーカーが多い日本で働きたいという。銃弾飛び交う戦場においてすら科学する心は育まれる。穏やかな物腰の影には強靱な戦士の意志が潜んでいることだろう。世界を知るということは自分の価値観が相対化させる事でもあり、些細な悩み事など軽く吹っ飛ばされる凄い体験があると言うことが思い起こされた。