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米国から京都へ はてな近藤社長の真意は (1/2) - ITmedia NEWS

欧米の大学にはサバティカルという制度がある。7年に一度くらいの間隔で、学術面での充電を許される制度だ。通常は沢山ある授業、委員会など任務を免除され、本務を離れる事ができる。多くの人は大学を離れてよその研究室に滞在させてもらい研究や、物書き、論文執筆にあてる。違う環境にいて新しいアイデアや、研究技術を学ぶ事が出来るのだ。ある実験好きの教授はサバティカルを自分の研究室で研究三昧で過ごすという究極の贅沢を味わったそうだ。教授以外は全て時限の学生・ポスドクばかりの研究室が多いのでラボに新しい流れを持ち込むには自らが外に出かけて学ばなければいけないのだ。

 はてな近藤社長アメリカに行くという話を聞いた時、「これはサバティカルだ」と思った。会社も名前が通ってきて軌道に乗り出した所だから早めの充電に入っても良い時期だろう。海外で修行している研究者たちには近藤社長の同年代がいっぱいいる。彼にも修行と勉強がまだ必要な年代だしシリコンバレーの空気を吸って力を試すのがよかったのだろう。「はてな海外進出!」と騒ぐ人もいたようだがむしろ日本発のサービスがあの国でどう受け入れられるかを探るアンテナショップとして任務が大きいのだと思っていた。

 社長不在のはてな東京本社の運営は大変だったのだろう。そりゃあネットで会議は可能だろうが、トップの存在とは単に指示を出すだけではなくその場にいて無言でメンバーの志気を上げる役割もあるのだ。わずか40平米のオフィスではますますリーダーの存在は大きい。

  私のアメリカ留学中にサバティカルで滞在して一緒にスキーなどにいって親しくしてくださったカナダ人の教授に「留守中のラボはどうなっているの?」と聞いてみた。「毎日メールを打って連絡を取っているから大丈夫」、という返事だった。しかし実際は彼が戻ってみると研究室の管理は大変な事になっていて(学生だけが残されていたらしい)、立て直すまで苦労したとあとで聞いた。

 近藤社長が帰国し、京都に本社を移して活動をはじめるという。これはとてもいいことだ。アメリカ滞在で得た体験はこれから必ず生きるはずだし、会社運営の大変さもわかったはずだ。おまけに京都は学問の都。東京とは違った人材が集まるはずだ。今回の動きをネガティブに捉える人もいるみたいだが、そのうちの半分は近藤社長に自分の過剰な夢を投影した人、残りは社長の行動をわがままと捉えた常識人だ。

 でも気にすることはない、創造の天使は身軽なフットワークと前例にとらわれない柔らかい心に降り立つはずだ。もっとも変で、おかしな会社からこそ、誰も考えつかないアイデアがうまれる事を私たちは知っている。