素数を愛した博士

 東大が配信している「学術俯瞰講義」は毎年異なる分野のオムニバス講義を行っている。2007年のお題は「数理の世界」*1。その第一回が加藤一也京大教授による「数学の魅力」。これが最高に面白い。素数の話が主題なのだがこの人は心の底から数字が*2大好きで数字の行列に愛と音楽とそして数理の真理を味わえる人なのだった。この人独特の詩的な表現は抽象化の極致であるはずの数理の世界を、ある種独特な方法で人の味わいがある概念に解釈し直す能力を持っていることをあらわしている。この先生の頭脳には数字の羅列に音楽を聴き、詩的な世界に解釈させる鋳型が備わっているからだろう。素数のように「素」の魅力溢れる学者。すごい変人だと思うのだがどのような幼年時代を過ごしてこの才能が育ったのか、興味津々である。

 調べてみるとやはり「天才」と賞賛される学者であった。朴訥な変人ぶりで小川洋子さんが描く「博士」が現実である事の生きた証明だ。

博士の愛した数式 - roadman2005の日記
博士の愛した数式 - roadman2005の日記

 以下講義メモより。味わい深い言葉が随所に溢れる。

心静かに写素数

 素数の列を書き並べると数字の魔力が見えて来るということか。

自然界の神秘は数の世界の神秘に凝縮し、
数の世界の神秘は素数の世界に神秘に凝縮する

 整数の数列の中に一見無秩序に現れる素数の中に規則性を見いだそうとする試みの中に高度な数学理論が発達した。

素数のうた
http://www.asahi.com/jinmyakuki/TKY200612110091.html

 講義のおわりには踊りまで披露。

非可換類体論は代数的な対象が素数の海を渡ってゆくときに奏でる不思議な音楽を聞き取るもの


いろいろなものが素数の海を渡っていく

素数の海は私たちのふるさとである

*1:iTunes Storeでも見ることができる)

*2:あえて「数学」とは言わない