首相のリーダーシップ

 ついに国会が解散してしまった。政府として懸案山積の時期に解散とはもってのほか、という意見もある。しかしいつになっても懸案がなくなることなどないわけで国民に信を問わなくてはいけないときには断行するということ自体には賛成だ。痛みを伴う大きな改革を目指すとき、話し合いだけでは埒が明かなくなることがある。そのときリーダーシップをとるのが政治の役割で, その決定の整合性を調整するのが行政(官僚)の役割だ。

 小泉首相は首相としての切り札を切った。国会機能は停止し選挙で世間は大騒ぎだ。郵政改革の是非、自民党の勢力争い、自民党自由党の勢力バランスなど個々のテーマは多い。しかしそれよりも私の興味は今回の選挙は首相が強いリーダーシップを行使しようとしていることに対しての国民の是非を問うという位置づけと捕らえる。この国では、独裁のイメージがまとわりつくリーダーシップを民主制の衣でくるんでしまうことを是としてきたと思う。しかし国家において優れたリーダーシップを不可欠だ。この国のリーダーたるべき首相とその予備軍である国会議員がどう振る舞っていくか、改めて見定めてみたい。彼らには会社や、私が活動している科学研究のグループなど様々なレベルでのリーダーのひとつの鑑であってほしいと願うからだ。

 郵政民営化については議論が枝葉のレベルに矮小化して否決という結果に終わったと思える。「十分議論を尽くしてから」という決まり文句がでているが、郵政改革の真の目的である郵貯簡保の資金が財政赤字増大の原因であるという指摘が正しいなら次世代の国民にこれ以上の負債を残さないためにも極めて緊急に改革の道筋をつけなくてはいけないだろう。郵政ネットワークは重要な資産だがインターネットがより信頼度を増せば郵便への依存度が下がるだろう。今の内にスリム化の道をつけておかないと巨大な負の遺産になることも明らかだ。

 今回なぜ民主党が反対に回ったかを理解するために民主党「郵政改革に関する考え方」についてというページを見てみた。要約版を読む限り主張が不明確。この国をどうしたいのかという理念を読みとることは残念ながらできなかった。この政党にはしっかりした政策を記述できる人材が欠けているようだ。結局は労組の支持を切ることはできないのでこんな歯切れの悪い主張になったともいえる。