ダム

 急峻な河川ばかりの山国でである日本では水を貯め、川が大地を削るのを制限し、エネルギーを得るためににダムは欠かせない。登山で山奥に分け入っていきなり巨大なダムに対面すると、山に匹敵するような巨大な構造物を持って河川の流れを制御しようとする人間の大それた営みに感動する。また大きさと共に、強大な水圧に抗するために計算された構造が生み出す美しい造形美にとらわれる。ダム工事というと最近では無駄な公共事業の代表としてやり玉に挙げられる事が多いのだが(田中前長野県知事のように)、それでもダムの必要度はなくならない。心の中に沈殿していたそのような思いを掘り起こしてくれたのがこれ。

ダム

ダム

 書店の写真コーナーで目を奪われて購入。広角レンズで捉えられた数々のダムの姿が美しい。それに加えて著者のホームページ:ダムサイトを見るとダムを見て回るダムマニアという人たちが居ることを初めて知った。鉄道マニアほど数は大きくはないだろうが、世の中同行の士というものは居るものだ。

 本書については全編カラーでダム用語、ダムの探し方からダムマニアの行動に関する説明まで楽しく読める。値段も手頃。惜しいのは出版に際して取材し直したためであろうか選ばれていたのが関東中心だったこと。著者には本作品で印税をがっぽりもうけて次回作は「世界のダム」を作ってほしい。

☆☆

追記

 ダムの美しさは「圧倒的な水圧にたいして絶対に壊れないこと」を追求した機能美だと思います。大都市の建築の美しさは高さを稼ぎ様々な装飾を凝らしたものが競っていますが所詮は自重に耐えれば良いというレベルのもので昨今騒がれている強度不足の建築がまかりとおってしまいます。ダムは水圧の静荷重だけではなく大機な地震にも耐える強さが求められます。神戸の大地震で崩壊した数々の建築とは桁違いの強靱さと信頼性が見るものを圧倒し感動させるのでしょう。

 それからダムを舞台にしたアクション小説といえばホワイトアウト (新潮文庫)
ですね。映画は見ていないのですが小説だけでわくわくするシーンの連続です。かつて扇沢トンネルを歩いて冬期の黒四ダムまで行った事がありそのとき見た黒部渓谷の様子が記憶に残って居たからだと思います。