プンタアレナスへ、ペンギン営巣地


 9時発のバスでプエルトナタレスを離れる.三時間ほどの移動.途中何カ所かでお客さんをおろしたりのせながら走る.乗車時に空港に行くか?と聞かれたりしたので乗降は客の希望にこまめに合わせてくれるようだ.出発した頃は晴れ間も見える天気はやがて雨にかわり、プンタアレナスについた頃にはかなりの降り.日本の梅雨みたいだが寒さが違う.宿はガイドに乗っていたモンテカルロに向かい問題なくチェックインすることができた.古い造りだが天井が高いのが気持ちいい.共用バス・トイレで9000ペソ.しかし壁が薄く、となりの話し声がよく聞こえる.長居にはしんどいだろう.雨は降り続くが予定のペンギンツアーの申し込みに出かけて、4時からのツアーに入ることができた.マゼランペンギンは10月頃から営巣地に集まり見学ツアーが組まれる.船で行くMagdalena Islandのツアーは来週からなので車で行けるオトウェイ営巣地に行く.入園料など合わせると15500ペソ.ミニバンに16人満員をのせて出発.

 現地に到着すると車を降りる前に運転手が紙芝居でペンギンの解説を始めた.その講釈が長いこと長いこと.とうとうブーイングが出てようやく外に出られる.1時間半ほどの自由時間が与えられ決められた観察路を歩く.雨は上がり青空が見える.駐車場の周辺は牧場で家畜に踏み固められ、短い草が映えるのみの草原だ.営巣地に近づくとやや大型の茂みも散在するようになる.いたいた、草原に1匹歩いている.大喜びで写真を撮る.しかし海岸に近づくとさらにいる.200匹くらい.

 海岸に寝そべっているものも多いが何匹かは行き戻りしつつ陸地を目指す.ところが草地が始まるところに小さな水たまりがあり30センチほどの高さをおりなくてはならない.ペンギンは躊躇していき戻りしつつ遂に意を決して飛び込む(ドボン).

 その後40cmほどの深い溝を列をなしてあるくとやっと草地に到着する.この溝はどうやらペンギンの長年に渡る行進で掘り込まれた歩行路のようだ.あちこちに巣穴が見える.歩行路は柵で仕切られているがペンギンは人を恐れずにすぐ近くまでやってくる.人出が途切れた際には人間用の歩道を横切っている者もいる.そうしないとたどり着けない巣穴も多数あるようだ.観察時間が夕方に限ってペンギンが自由に動き回れる時間帯を確保しているのだろう.


巣作りに励むペンギンは草をくちばしでくわえて穴に潜り込む.


尻だけ見える姿を大勢の観光客が覗き込む.

 11月は営巣の始まりにあたり.10月頃から雄がまず集まり、11月頃から雌が泳ぎつくのだそうだ.ということは巣作りを始めているのは雄のはず.立派な巣穴を用意して雌を待つのだろうか.さらに奥には既に成立したカップルが巣穴のそばに並んでいる.浜辺にいたペンギンよりも体格が大きく見える.リピーターの成鳥なのかもしれない.

 保護地区の草原には歩行路が縦横無尽に広がる.毎年決まった場所で営巣することでけものみち(?)は整備され、巣穴も再利用されるようだ.立派に整備された巣穴が雌を誘う決め手になるとしたら集団で営巣しないとカップル成立が効率悪くてしかたないだろう.この営巣地に至る歴史には動物の社会行動の進化のあり方が秘められているはずで、あれこれ想像することは楽しい.昨年生まれてここに始めて戻ってきた個体がどのようにして巣作りを覚えるのだろうか?本能に組み込まれた行動と、年長の個体から学ぶ行動とがあるのだろうか?なぜ、どのようにして集団で営巣することを学んだのか?興味は尽きない.ペンギンは人を恐れないのでじっくり観察することができるので学術研究の題材としても面白そう.

 駐車場に戻るとコーヒー、お菓子、それからピスコサワーが振る舞われる.ピスコサワーは酎ハイの濃いようなものだが結構おいしいのでお土産にすることに決める.

 町に戻ると再び雨.冷たい雨の中レストランを探しまわり安そうなところに飛び込む.サッカー中継がTVに映されみんなビールを片手に観戦中.魚介のスープはとてもうまい.サッカーはアウェイチームが3−0で完勝.すると観客は勝ったチームの選手に物を投げつけ始めた.そのため選手退場時には機動隊のような防具に身を固めた警備員の盾に守られてスタンド下の出入り口に走り込む.さすがの南米サッカー.