プンタアレナス観光


 最終日はプンタアレナス市内を観光する.風は冷たいがきれいに晴れ上がり日本のお正月くらいの感じだ.まず市内を展望する丘にのぼりマゼラン海峡を望む.それから広場に下ってマゼラン像の周辺を見物.プンタアレナスはパナマ運河ができるまでは大西洋と太平洋をつなぐ貿易の拠点だったからか立派な建物も目立つ.


 マゼラン像周辺の木は立派に育ち歴史を感じさせる.また木をなぎ倒すほどの強風もないことを示している.像の周りには陽光を求めて市内の人々や観光客がひっきりなしに集まる.その後港を見学にさらに海に向かうが港は関係者以外立ち入り禁止になっていた.どうやら貨物船専用らしい.フェゴ島に渡るフェリーは市の郊外から出ているそうだ.となるとプンタアレナスを発着する客船はもうないということになる.寂しいものだ.

 再び市内を歩き回ってからホテルに戻り空港に向かうタクシーを探す.しかし黄色い屋根のタクシーはいっぱい走っているのに一向に止まってくれない.かたやお客さんがいるくるまにどんどん乗り込む人もいる.心配になって周囲の人に「エアロポルテ?」と聞くとノーとの答え.あわててホテルに戻りフロントの人に尋ねるとすぐに電話で呼んでくれた.しかし来たのはメーターもない普通の自家用車.白タクではないかと不安になって空港までの料金を尋ねると5000ペソというリーズナブルな料金だったのでひと安心.

 プンタアレナスからのフライトは右側窓際の翼後ろという絶好の位置だった.隣のおじいさんと話しているとイタリア人でイタリア・フランス国境の町アオスタから来たという.どうも山好きでパタゴニアの山を楽しみにしていたらしい.イタリア旅行で撮ったダビデ像の写真を見せると「俺の名前もダビデなんだ」などを話しだす.「写真を撮りたいから席をかわってくれないか」というのを断る.こっちも楽しみだったんだよ.離陸した飛行機はなんとパタゴニアの山岳地帯の真上を飛行するのだ.おまけのこのまれに見る晴天.まずパイネ山群に近づくとクエルノスが見える.おじいさんは興奮しだして席を後ろに倒せとか、ちょっと写真を撮らせととか大騒ぎ.次にペリトモレノ氷河を見下ろしフィツロイ山群に近づくとおじいさんの興奮は極致に達し「チェロ・トーレ、チェロ・トーレ、フィッツ・ローイ」と叫んで大騒ぎ.

 なんとこの好天のおかげでセロ・トーレとフィッツロイの山頂が両方とも見えるという奇跡のような日だったのだ、それも観光客が見れない西面から.眼下には真っ白な南部氷床が広がり、あちこちの谷から氷河となって流れ出している.1000mの高地に氷の海が広がる光景に息をのむ.やがて北部氷床も通過し穏やかな山並みにかわってくるとおじいさんの興奮も収まり、互いに良い写真が撮れてよかったねと握手するなり眠りだした.おじいさんの傍らには奥さんが全く関心示さず静かに本を読んでいた.無邪気なおじいさんと良い取り合わせの老夫婦だ.