スリに遭遇する


 コロンブス像を見てからランプラス通り脇の蝋人形館の入り口を取っていたら「カメラマンですか?シャッターを押してくれませんか?」と女性の二人組に話しかけられた。カメラ持っているからカメラマンには違いないのだが・・・、とにかく二枚シャッターを押してあげた。仲むつまじい様子からカップルとわかる。オーストリアから来たそうだがあのあたりの人は素朴で笑顔にも親近感が持てる。
 これで気を許してしまった。地下鉄駅そばを歩いていると「美術館はどこだ、地図を見せてくれ」とスペイン人のおばさんが近づいてきた。名前を聞いたことのない美術館なので地図を出して見ていたらもう一人の女が後ろから近づいてきた。英語ができるという、まくし立てる女二人組の相手をしていてふと気がつくと広げた地図に隠れてウエストポーチに手を伸ばしているではないか。それを見とがめると「なんでもない」と言いながら女達はそそくさと立ち去っていった。危ない危ない。そもそもスペイン人が観光客なのがまるわかりの外国人に道を聞くはずなどない。最初から用心すべきだったのだ。

 しかしそれでも「世の中には悪い人などいない」と思いこむのは日本人の悪い癖だ。最終日も急いで外出してとある公園を歩いていたら木の下で突然背中に液体がかかった。あわてていたら女が近づいてきて、「鳥の糞だふいてあげる」という。カメラにもかかったのでそちらに気を取られているうちにどさくさに紛れて今度こそ本当にすられてしまった。財布があるのは確認していたのだがあいつら(男との二人組)あっという間に現金とカードを抜き取って財布は元通りに戻していたので中身がないのに気づいたのはホテルに戻って支払いをすませようとする時だった。まいったまいった。観光客すがた丸出しであるいていたのがいけないのだがこわいものである。